📕日本語を英語にするお手本!意外と知られてない英語勉強法

サンディエゴからこんにちは!
英語コーチ しおはまなおこです。
生きた英語が学べる「映画/ドラマ/洋書」を活用して、英語を楽しく学び続けるヒントをお伝えしています♪
今回はちょっと趣向を変えて、日本語の小説を英訳したものを題材にしてみます。
「日本語を英語にする」と一言でいうとカンタンそうに思えますが、実はいろいろ複雑な要素を含んでいます。だからこそ日本語をうまく英語にできないことが多いのだ、と私は思います。
日本語を英語にするお手本が、日本語小説の英語訳。ベストセラーは英語版が出ている可能性が高いです。世界のコンマリさんの「ときめき収納術」、三浦しをん著「舟を編む」も英語版あり。最近では平野啓一郎氏の「マチネのあとに」「ある男」も英訳されています。読んでみてグッときた作品が英訳されていたらぜひ読んでみてください。
20年も前の話ですが、私が2002年に夢中になって読んでいたのが水村美苗著「本格小説(上下)」。夫もこの本にのめりこみ、映画化するとしたら配役はどうする?などと話をしたものです。
〈Amazonからの内容紹介〉
ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。
All Reviewの豊崎由美氏による書評が私の感想と近いのでリンクをはります。
『本格小説』(新潮社) - 著者:水村 美苗 - 豊崎 由美による書評
上巻43ページからの文章を引用します。「伝説の男・東太郎」について話をしている場面。
ある日父が母に言っていた。
– あの男は何も言わないが、以前何かメカニックのようなことをしてたんじゃないかって、周りの連中が言ってる。まったくの素人にしちゃあ、いくらなんでも呑みこみがよすぎるそうだよ。
– じゃあ、なぜ何も言わないんでしょう。
– さあ、厭なんだろう。
– メカニックをしていたということがですか?
– さあどうだろう。日本のことが全部厭なんじゃないかな。
英訳をみてみましょう。英語のタイトルは「A True Novel」、翻訳はJuliet Winters Carpenter。
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One day, I heard my parents talking.
“That guy never breathes a word about it himself, but everyone at work figures he must have been some kind of mechanic back in Japan. A real beginner could never catch on so quickly.”
“Well, if that’s the case, why doesn’t he say so?”
“I guess he doesn’t want to talk about it.”
“You mean he doesn’t want to know he was a mechanic?”
“I don’t know. It’s more like he wants to forget everything that happened to him back home.”
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ある日父が母に言っていた。
↓
ある日、父が母に言っていた(のを私は聞いた)。
日本語では( )部分が省略されていますが英語ではきちんと訳されています。日本語は省略が多いということは、英語と比べてみるとよくわかります。
続けて引用します。東太郎の英語にかける情熱について。
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しかし何よりも皆が眼を瞠ったのは東太郎の英語である。英語というより、英語にかける情熱である。他の駐在員よりも若くして渡米し、アメリカ人の家で一年近く寝泊まりしていたのだから、英語が人より少しはできてあたりまえであったが、父の期待すら上回ったのは、彼の他人など存在しないが如くの、人目も憚らぬ精進ぶりであった。
Still, what astonished the other employees most was the passion with which Azuma devoted himself to learning English, a language that presents a huge challenge to Japanese people. That Azuma’s English was better than theirs was only natural: he had the advantage of coming to the States while young, and he had lived with an American family. But the effort he put into trying to get a grasp of the language – single-mindedly, not caring in the slightest what other people thought–went even beyond my father’s expectation.
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他人など存在しないが如くの、人目も憚らぬ精進ぶり
single-mindedly, not caring in the slightest what other people thought
こういう表現、英語で読むと「なるほど」と思うけれど、いざ自分で英語にしようとすると出てこないものです。
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全部読むのは時間がかかるので、会話部分に注目するといいかもしれません。「こういう言い方があるんだ」という発見がきっとあります。
あなたにはあなたに合う英語学習法があるので、ちまたで効くと言われている方法がダメでもあきらめないで!ふとした偶然がきっかけでピタッとくる学習法が見つかるかもしれませんよ。
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2002年といえば再婚して2年、なかなか子どもができなくて不妊治療をしようか悩んでいた時期でした。字幕翻訳家としても必死に頑張っていたので、英語圏への移住は夢の1つとして心にあっただけ。英語が話せない自分がイヤでたまらず、コンプレックスでカチンコチンになっていた時期でもあります。だからこそ、この東太郎の英語に対する情熱を描写する部分が私はすごく好きで「やっぱり本気でやるならここまでやらないとね!」と自分を奮い立たせたものです。
この本の下敷きとなったエミリー・ブロンテの「嵐が丘」を私は読んでいないので、2023年に読もうと思っています。実は私、古典と呼ばれる小説や、アメリカの子どもたちが学校で読む「アメリカ人ならたいてい読んでいる本」を英語で読んでいません。これから少しずつ読んでいきたいと思っています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
次回の記事も、どうぞお楽しみに♪
Naoko Shiohama
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人生は楽しんだものがち!
英語も楽しく習慣にしましょう♪
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【日本語と英語についての過去ブログ記事リンク】