サンディエゴからこんにちは!
元字幕翻訳家の英語コーチ しおはまなおこです。
映画・ドラマ・本を通じて、英語を楽しく味わうヒントをお伝えしています♪
今回ご紹介するのは森絵都著「みかづき」。この本は「教える」ということについて深く考えさせられました。
戦後、千葉で小学校の用務員をしていた吾郎。授業についていけない子供たちに、用務員室で勉強を教えるようになります。用務員室での補習が個人塾になり、そして大きな規模の塾を経営するようになる、という物語。
今回は私の心にグッときた5つのポイントを話します。
好奇心の大切さ
親がすべきこと
英語は語順が大切
とことん考える
足りないからこそ努力する
吾郎が、塾の教師としてスカウトしてきた青年に言うセリフ。
「君も知ってのとおり、うちの理念は『自主性を育む』だ。近ごろ流行りのスパルダ塾とはちがって、知識のつめこみよりも子どもたちの知的探究心を引きだすほうに重きを置いている。言うほど簡単じゃないけど、やり甲斐はあるよ。塾の教師はね、はまる仕事なんだ」
この「知的探究心を引きだす」という部分。あ、面白そうだな、もっと知りたいな、と思う気持ちを刺激するのは、教える側の大事な役目だと思います。
子どものころは知的探究心のアンテナがまだ芽を出したばかり。その小さな芽に水と栄養を与えて伸ばしてくれる存在に出会えるかどうかで、その子の人生には大きな違いが出るはずです。
私が大好きな東野圭吾の「真夏の方程式」には、こんなセリフが出てきます。
好奇心を放置しておくことは罪悪だ。人間が成長する最大のエネルギー源が好奇心だからな。(ガリレオこと湯川博士の言葉)
また、脳科学者の池谷裕二さんが書いた「記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方」にも好奇心についての文章があります。
脳は使えば使うほどさらに使えるようになり、逆に、使わないと脳の機能は低下する一方になる、という部分の説明です。
「食欲がないのに食べると健康を害するように、欲求がないのに学習すると記憶を損なう」とはレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉です。何にでも興味を持つ「好奇心」と「探求心」こそが記憶にとって大切なビタミンなのです。
吾郎の義母、頼子(よりこ)が吾郎に言うセリフ。
「どんな子であれ、親がすべきは一つよ。人生は生きる価値があるってことを、自分の人生をもって教えるだけ」
これ、ジーンと胸に響きました。
子どものためと思って、あれやこれや手を焼くことが多かった私ですが、娘2人が成長するにつれて、一歩引いて見守るようになりました。
「あなたたちを産んで母親になったことが、人生最大の試練であると同時に喜びでもある」ということは伝えておきたいです。
ヤマザキマリがお母さんの思い出を書いた「ヴィオラ母さん」にも、こんな言葉がありました。
リョウコ(お母さん)が子どもを産んでも、世間が作り出した母親像をほとんど意識することもなく、独自の子育てを通し続けられたのも、命の自由を謳歌し、波乱万丈でも「生きることって結局は楽しいんだよ」ということさえ子どもに届けばそれでよし、とどこか確信していたからなのだろう。
吾郎の妻、千明が娘とその友人二人に英語の基礎を教えるシーン。
この夜、千明が徹底して三人に課したのは、一般動詞とbe動詞の差別化を意識した単語のならべかえ問題だった。結局のところ、英語理解の鍵は文章を組みたてる力、つまりは作文能力にある。主語、動詞、目的語や補語、場所や日時などの付帯条件。これらの順序をしっかり脳に彫りつけて初めて、エイリアン語のごとき英語を同じ人類の言語としてあつかう準備が整うのだ。逆に、そこがあやふやなまま複雑な現在完了形や使役動詞をいくら教えたところで使いこなせるわけがない。エンジンのない車に給油をするようなもので、機能しないままパンクするのが関の山だ。
「エイリアン語のごとき英語」というのが実に言い得て妙です(笑)。
学校では、英語の語順はこうだ、と文法で教わります。でも英語は語順に厳しい言語だ、という切り口では教えてもらえません。
日本語は「てにをは」があるため、語順がかなりゆるやかです。英語にはこの「てにをは」がありません。英語の場合は語順が「てにをは」の役目を果たすのです。だから語順がめちゃくちゃだと意味が通じなくなってしまうのです。
「英語は語順に厳しい」ということは、ぜひ覚えておいてくださいね。
悩みをかかえた孫の一郎に、吾郎が言うセリフ。
「遠山啓という数学者も言っていた。ダーウィンもアインシュタインもメンデレーエフも、けっして頭の回転が速い人たちではなかった。その代わり、ものごとを徹底的に考える人たちだった、と」
「徹底的に考える」ことはそう簡単ではありません。考えたことを、うまく言葉にするのも難しいです。母国語である日本語でも難しいのですから、考えをうまく英語にできないのは当然といえば当然なのです。
だから、私は英語学習において、丸暗記や文法の知識を詰め込むよりも、まずは日本語でものを考える力を鍛えたほうがいいと思うのです。
ものの考え方でおすすめの本があります。社会派ブロガーのちきりんさんが書いた「自分のアタマで考えよう 知識にだまされない思考の技術」という本です。
まえがきにこうあります。社会人になりたてのころ、上司からもっとよく考えろ!と何度も叱られたそうです。そしてそのたびに、考えろ考えろっていうけど、これ以上、どうやって考えればいいのよ、と心のそこで叫んでいました、とのこと。
アノ当時、「何を考えればいいのか、どう考えればいいのか、この本を読めばわかるからまずはこれを読め!」と言ってもらえる本があったらずいぶんラクだったのに、と思います。そしてこの本を、あのころの自分に役立つような、わかりやすく、読んでいて楽しい「考えるための方法論をまとめた本」にしたいと考えるようになりました。
ちきりんさんはVoicyでもパーソナリティをやっているので、私はいつも聴いています。
自分の本の出版記念パーティーで、吾郎がスピーチをします。
「妻はこんな話をしました。(中略)常に何かが欠けている三日月。教育も自分と同様、そのようなものであるかもしれない。欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽をつむのかもしれない、と」
まったくそのとおりだ、と思いました。上を目指しつつも、どこかで折り合いをつけなくてはならないことはしょっちゅうあります。
私自身、私は英語ができます!と胸を張って言える日がくるとは思えません。マジメで謙虚な頑張りやの人は、みんなそうでしょう。
自分は「満ちよう満ちようとする三日月なのねー」と納得しながら、毎日コツコツボキャブラリーを増やすのが、私の喜びです。
今回は森絵都著「みかづき」をご紹介しました。ポイントは5つありましたね。
好奇心の大切さ
親がすべきこと
英語は語順が大切
とことん考える
足りないからこそ努力する
英語への情熱をかきたてる本を読むのは、本当に楽しいことです。あなたもぜひ「みかづき」を読んでみてくださいね。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
次回もどうぞお楽しみに!
Naoko Shiohama
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人生は楽しんだものがち!
英語も楽しく習慣にしましょう♪
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©2024 Naoko Shiohama